モンテーニュ『エセー1』第4部解説|哲学的思索と教育論(第19章~第25章)


はじめに

第4部を読み進める中で、私は人生の根本的な問いと向き合うことになった。特に第19章の「哲学することは、死に方を学ぶこと」を読んだとき、自分がいかに死を意識せずに生きているかを痛感した。

また、第25章の「子どもたちの教育について」では、真の学びとは何かという問いに深く考えさせられた。そして第22章の「習慣について」は、私たちの人格形成における環境の重要性を改めて認識させてくれた。

モンテーニュの思索は、生と死、学びと成長という人間の根源的なテーマを鋭く問いかけてくる。


仙人との対話

仙人との対話

探究者:「第19章の『哲学することは、死に方を学ぶこと』という言葉が、とても重く響きました。死を意識することで、実際に生き方が変わるものでしょうか?」

仙人:「興味深い問いじゃな。では、死を忘れて生きることと、死を意識して生きることの違いは何だと思うのじゃ?」

探究者:「確かに、普段は多忙に過ごしていて、死について考えることはほとんどありません。でもモンテーニュが言うように、いつ死んでもおかしくないという気持ちで過ごせば、きっと一日一日の価値が違って見えるはずです。」

仙人:「そうじゃな。死という現実を受け入れることで、むしろ生がより鮮明になるということじゃ。では、第20章の想像力についてはどう感じたのじゃ?」

探究者:「『想像力は出来事を生み出す』という言葉に驚きました。つまり、私たちが想像することが現実を作り出しているということでしょうか?」

仙人:「まさにその通りじゃ。想像力の力は我々が思っている以上に大きい。この世界は想像力からできあがったとも言えるほどじゃ。では、第21章の利害関係についてはどう捉えたのじゃ?」

探究者:「『一方の得が、他方の損になる』という考え方は、とても考えさせられました。モンテーニュの時代はそうだったのかもしれませんが、現代では違うと思うんです。」

仙人:「ほほう。どのように違うのじゃ?」

探究者:「現代ではウィンウィンの関係を築くことが重要視されています。なぜなら、相手を負かして勝っても、それは一時的なもので必ずうまくいかなくなると思うからです。永続的な成功のためには、互いに利益を得られる関係を築く必要があります。」

仙人:「なるほど。では、第23章の『同じ意図から異なる結果になること』についてはどう思うのじゃ?」

探究者:「これは現代でも変わらない真理だと感じました。たとえ同じ選択をしても、結果は運命に左右される部分があります。それならば、結果がどうであれ、自分の信念に従って行動することが大切だと思います。」

仙人:「その通りじゃ。信念を曲げなければ、人徳を失うことはないからのう。では、第22章の習慣についてはどう感じたのじゃ?」

探究者:「『我々の最も大きな悪徳というのは幼年時代にクセがつく』という言葉が印象的でした。習慣によって性格や人柄が形成されるというのは、現代の教育論にも通じる重要な洞察ですね。」

仙人:「そうじゃな。幼少期は、善も悪も何もない状態から始まる。つまり、一番大事な教育は、その時期に育てる人の手に託されているということじゃ。では、第24章の学問についてはどう思うのじゃ?」

探究者:「『学問することで、精神の働きが改善されず、判断がより健全にならないというのならば、むしろテニスなんかをして過ごしたほうがましだ』という言葉が衝撃的でした。これは現代の教育に対する痛烈な批判とも受け取れますね。」

仙人:「まさにそうじゃ。単なる知識の詰め込みではなく、実際に判断力を向上させることこそが学問の本質的な価値なのじゃ。では、第25章の教育論についてはどう感じたのじゃ?」

探究者:「『他人の教えをそのまま学ぶのではなく、それを我が物にしてしまうこと』が重要だという考えに深く共感しました。心理や理性は万人に共通のものだから、他人から借りてきた部分部分を変形して、混ぜ合わせ、自分のものである判断力を作り上げることが教育の目標なんですね。」

仙人:「その通りじゃ。そして、モンテーニュが言うように『暗記して覚えているのは、知っていることにはならない』のじゃ。正しく知っていることとは何じゃと思う?」

探究者:「実践して自由に使いこなすことだと思います。プラトンの言葉を引用しながら、『揺るぎの無さ、信念、誠実さこそ、本当の哲学』だと述べているのも印象的でした。現代の知識偏重社会への重要な警鐘ですね。」

仙人:「よく理解しているようじゃな。真の学びとは、知識を自分の血肉とし、実際の判断に活かせるようになることなのじゃ。」


知識の再構築

知識の再構築

第4部を通じて、私は人生の根本的な問いについて深く考えることができた。死を意識することの意味、想像力の創造的な力、習慣が人格に与える影響、そして真の学びとは何かという問い。これらのテーマは、すべて現代の私たちにとっても重要な意味を持っている。

特に教育論については、現代の知識詰め込み型の教育に対する根本的な問い直しが必要だと感じた。判断力を育成することこそが教育の本質的な目標であり、知識はそのための手段に過ぎない。


いま心に残っている問い

心に残る問

第4部を読み終えても、私の中にはこの問いが残っている:

「死を意識することで、本当に生き方は変わるのか?」

そして、もう一つ:

「真の学びとは何か?知識を得ることと、理解することの違いは何か?」

これらの問いは、日々の生活や学習の中で繰り返し現れる。完璧な答えはないかもしれないが、モンテーニュの視点を参考にしながら、自分なりの答えを見つけていきたい。


結び:読者へ

この記事を読んでくださったあなたにも、モンテーニュが投げかけた問いが何か届いていれば嬉しい。

「あなたは、死を意識して生きていますか?」

「真の学びとは、あなたにとって何ですか?」

「習慣が人格形成に与える影響について、どう考えますか?」

答えは一つではないし、時と共に変わっていくものかもしれない。それでも、一緒に考え続けていけたらと思う。


次回予告:エセー2への導入

第26章からは、より実践的な人生論が展開されます。特に第27章「友情について」では、人間関係の本質が深く探求されます。

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